クリエイションをめぐるつながりが社会を変える

村松孝尚

​ROOMS/H.P.FRANCE 代表

1952年、長野県生まれ。大学卒業後、出版社勤務を経て1984年、東京・原宿にレディースファッションの店「Lamp」を開店。翌1985年、H.P.FRANCEを設立。ファッションを中心に、インテリア、アートなど生活と文化に関わる事業を多角的に展開。日本全国に約70店舗、主力商材はヨーロッパや北南米、国内デザイナーなどのファションと服飾小物。また、合同展示会「rooms」など業界全体を盛り上げるための取り組みにも力を入れている。企業理念は、「創造的であるということ、グローバルであるということ、“人が生きる”ということ」。

【聞き手:湊屋一子】

その人の才能を感じ、信じるだけ

村松氏曰く、自分は「目の前に現れたものをありがたくいただくだけ」だと。国内外のクリエイターを見出し、その作品をクリエイターの世界観とともに紹介するセレクトショップを1984年に立ち上げ、四半世紀以上にわたり率いてきた彼が、自分のことは「センスなんてない」と言う。

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「パリで出会ったフランソワーズ・セーグル※が『あなたはセンスないんだから、私に任せなさい』と、僕に見せてくれたもの。その美しさに感動した。それがずっと続いている。一つ、僕が他と違ったとすれば、クリエイターが作ったものをそのまま日本で紹介したこと。クリエイターの感性をそのまま信じたことです」
当時、パリには日本から多くのバイヤーが来ていた。彼らはクリエイターの作品に対し「日本人はこの色は嫌い。こっちの色に変えて」と、想定している消費者の好みに合わせて変更させたものを買い付けていたそうだ。だが村松氏はクリエイターがいいと思った色なら、そのまま買い付けて店に並べた。

「そうすると、お客様がすーっと来て見つけてくださるんです。もちろんすでに分かっている好まれる色、好まれるスタイルに合わせて作るっていうのも、商売としてはありだし、それもわかる。でも自分はすでに見えているものじゃなくて、未来のものを、クリエイターとお客様と一緒に見ているのだと思う」

※ フランソワーズ・セーグル / アッシュ・ペー・フランスの誕生にかかわるフランス人バイヤー。エレガントで洗練された感性で選んだ、ヨーロッパの独創的なクリエイターとその作品を紹介。その存在なくしてアッシュ・ペー・フランスは語れない。

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Francoise Seigle Carroll

まだ見ぬ“それ”に手を差し伸べる

村松氏の言う「未来のもの」とは何か?

「なんていうんだろう……まだ知られていない何か美しいもの、それはもしかしたら、創作者であるクリエイター自身もまだ知らない、でもこれから生まれるであろう“それ”が在ることだけはわかる。その存在を、クリエイターと、お客様、その橋渡しをする僕らは、一緒に見つめている。僕らが紹介するのはすでに知られている、欲しがられているものではなく、まだ見たことはない、でも在る、未来のもの……そういうことです」

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SERGE THORAVAL

その存在を確信し、クリエイションの力を信じてきた村松氏。最初の店を構えた1984年から、様々な流行が生まれては消え、日本の、いや世界の社会情勢も経済状況も大きく変わり続けている中で、その確信が揺らぐことはなかったのだろうか。そう問うと、きょとんとした表情で「ないですね」と即答する。

「迷いようがない。信じられる根拠? だって……必ずお客様が見つけてくださるから。それは最初の店からそうだった。フランソワーズに紹介してもらったアイテムを並べるなら、ここに置くのが当然と思って、ラフォーレ原宿の店に並べました。周囲は『客層が違う』『そんなところにおいてもダメ』と言ったけれど、僕はそう思わなかった。そして、店で見ていると『あの人、かっこいいな』という大人の女性がエレベータから降りてきて、まっすぐ店へきてくれた。あの頃から、僕が何かを、誰かを狙ってモノを選んでいるのではなくて、美しいものを持ってくれば、お客様は結果として反応してくれるのです」

Tramando

ASTIER de VILLATTE  photo by Julie Ansia

ASTIER de VILLATTE  

photo by Julie Ansiau

クリエイションをめぐるつながりが社会を変える

ではそこに、ショップスタッフはどうかかわっていくのか。

「僕らの役割は、クリエイターとお客様をつなぐこと。スタッフの興味や興奮は、お客様に伝わる、反応してもらえる。出会うべきものに、出会うべき人が出会うためのテーブルを、僕らは作っている。誰かの人生を豊かなものにする、そこに僕らはかかわっているんです」

 村松氏はクリエイションの目的(ゴール)は、人が豊かになること、ととらえている。

「大切なのは創造・グローバル・人が生きる、ということ。この中でグローバルというのは、経済のことではないです。クリエイションにとってグローバルとは、違いを認める、すべての存在を認める、多様性そのこと。国境があるインターナショナルではないのです。そこのところを、しっかり認識してほしい」

 コロナ禍というパンデミックな状況で、クリエイターもショップスタッフも、そして消費者も、それぞれに我慢や葛藤を抱えている。だからこそ「ブレている場合じゃない」と、村松氏は言う。

「クリエイションが人を豊かにする。それがこのパンデミックで、今まで以上にはっきり感じられるようになっています。作る人、伝える人、ピックアップしてくれる人が循環していく。そういうつながりが、社会にとって、今後もっと大事になっていきます。そこにかかわっていけるというのが、すごく楽しいし、幸せですね」

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石塚杏梨

ROOMS ディレクター